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人間の眼はカメラにたとえて説明することができます。
前の方から角膜、これは黒目の表面の透明な部分ですが、カメラでいうレンズに当たる部分です。そのうしろに虹彩といって茶色い眼の部分がありますが、これはカメラのしぼりのはたらきをしています。その後ろにあるのは水晶体といってこれもレンズに当たる部分です。 さらに奥の方にいくと眼球の後ろの壁に網膜という薄い膜がはりついていますが、これはカメラのフィルムに当たる部分です。眼の中に入ってきた光はレンズでこの網膜に集められて、そこに写し出された映像が視神経の束から脳に伝えられてものが見えるという仕組みになっているのです。 白内障とは、眼の中にある水晶体という器官が白く濁る病気です。カメラのレンズが曇って写真がうまく写らないのと同じで、白内障になるとものが霞んで見えることになります。 水晶体の濁りは少しずつゆっくり進んでいきますが、一度濁った水晶体は元通り透明にはなりません。それは若返りの薬がないのと同じことで、白内障の目薬は白内障が進むのを少しでも遅らせるという効き目しかありません。今のところ一度進んだ白内障は手術をして取ってしまうしか方法がないのです。 白内障の進み具合は患者さんそれぞれ違います。ではいつ手術をするのかということですが、これは基本的には患者さんが日頃の生活で不自由を感じるようになったとき、ということが原則になります。 もちろん、あんまりほったらかしにしておくのもよくありませんから、診察で白内障の進み具合をみて、私達が手術をお勧めする場合もあります。 手術の方法はここ10年くらいでだいぶん進歩しています。今おこなわれている最も一般的な白内障の手術の方法は、水晶体超音波乳化吸引術および眼内レンズ挿入術といいます。 手術はまず、特殊な超音波の器械を眼の中に入れて、水晶体を細かく砕きながら全部吸い取ってしまいます。最後には水晶体を包んでいるうすい袋だけを残した状態になります。しかし、あんまり白内障が進んでいると、水晶体はかちかちに堅くなっていて超音波の器械が歯が立たないことがあります。その時は、もっと大きな切れ込みを作って、水晶体をまるごと引っ張り出すことをすることもあります。 水晶体を取ってしまうとレンズがないのでピントが合わなくなってしまいます。 以前は手術をした後には厚いメガネをかけたり、大きなコンタクトレンズをつけたりしてピント合わせをしていました。 ![]() 最近は技術が進歩しましたので、ほとんどの場合、残したうすい袋の中に眼内レンズといって、小さなプラスチックのレンズを埋め込む手術を同時におこなっています。 ![]() 眼の中に埋め込む眼内レンズは、レンズの部分の大きさは直径6ミリくらいで、両端にのびている手の様な部分が固定するための支えになります。端から端までは13ミリくらいです。 眼内レンズはコンタクトレンズのように古くなって交換したりすることはめったにありませんし、ごろごろしたり異物感を感じたりすることもありません。また、レンズが入っていることは外からは全く分かりません。 ほとんどの患者さんに対してはこのように眼内レンズを埋め込む手術を同時におこなっていますが、200〜300人にひとりの割り合いで眼内レンズを入れることができない場合があります。それは、レンズを埋め込むためのうすい袋が生まれつき弱くてやぶけそうだったり、眼の壁からはずれそうだったりすることがあるからなんです。そんな場合に無理にレンズを入れようとすると、袋がやぶけたりはずれたりすることがあるので危ないですから、レンズを埋め込まずに手術をおわりにします。これは普段の診察で前もっては分からないので、手術の最中に判断することになります。 また、手術中に合併症といって、予期せぬ出来事がおこることがあります。ひとつめは、水晶体を吸い取る作業をしているときに、水晶体の袋がやぶけてしまうことがあります。これを後嚢破損といいます。さらにそのときにまだ吸い取っていない水晶体が眼の中に落っこちてしまうこともあります。これを核落下といいます。こんなことがおこったら眼の中のもっと奥の方まで処置をしなければならなくなりますので、手術の時間がずいぶん長くなります。 3つめは、眼の奥の細い血管から出血がおきて止まらなくなることがあります。 このような眼底出血が起こった時はやむをえず手術を途中で止めないといけなくなります。確率は10万人にひとりとものすごくめずらしいことではありますが、万が一起こってしまった時は、場合によっては失明することもあります。 4つめは、手術をすることによって眼の中にばい菌がはいりこんでひどい炎症になってしまうことがあります。専門的には眼内炎といいます。これも確率としては数千人にひとりと非常にまれではありますが、おこってしまうと点滴をしたり、場合によってはもう一度手術をしなければならなくなります。しかしこれは手術の前に十分に消毒をすることによってできるだけ防ぐことができます。 さて、患者さんの中で一番勘違いされていることは、白内障の手術をしたらメガネなしでなんでも良く見えるようになる、ということです。しかし、眼内レンズでは極端にいえば1ケ所にしかピントが合いません。ですから、眼内レンズのピントを遠くに合わせた時は、近くを見るのにはメガネが必要だし、眼内レンズのピントを近くに合わせたら、遠くを見るのにはメガネがいるということになります。 ![]() ![]() 遠くがハッキリ見えるようにした場合は、壁の時計を見たり、テレビを見たりする時は便利ですが、近くを見るとき、例えば新聞を読んだり縫い物をしたりする時はぼやけてしまいますので、そのときはメガネが必要になります。 ![]() ![]() 逆に近くがはっきり見えるようにした場合は近くの新聞などはメガネ無しでも大丈夫ですが、外を出歩いたり、車を運転したり、壁の時計や駅の時刻表を見たりする時はぼやけてしまいますから、やっぱりメガネが必要になります。 どのくらいの距離にピントを合わせるかはそれぞれ御希望もあると思いますが、基本的には今まで老眼鏡を使っていた方は、手術の後も遠くにピントを合わせて、近くを見る時には老眼鏡を使うようにするのをおすすめします。反対に若い頃から近眼だった人は、手術の後も軽い近眼くらいに合わせるのが、今までの生活とかわりなくいけるのでおすすめです。 白内障の手術をして、患者さんのみなさんが同じように視力が回復してくれたらいいのですが、必ずしもそういうわけにはいきません。というのは、手術をしてからどのくらい視力がでるかは、白内障以外の角膜(くろめの部分)や眼底の網膜の部分の状態によって変わってくるからです。 眼の奥にある網膜の中心の部分には黄斑といって、ものを見るための細胞が集まっている場所があります。この場所が痛んでしまうと視力はだいぶ落ちてしまいます。 糖尿病網膜症や黄斑変性症など、眼の奥に病気があると、カメラでフィルムが傷ついているのと同じですから、せっかく古くなったレンズを新しいものに取り替えてもうまく写真は写ってくれないのと同じことで、視力が出ない場合があります。 また、角膜(くろめの表面)にもともと星が入っているような方も、白内障の手術をしてもこれが邪魔して視力があまりでてくれないことが多いです。 ![]() さて、無事に手術も終わって良く見えるようになったのに、しばらくしてからまたかすんでくることがあります。この原因のひとつに後発白内障と言うものがあります。 これは、眼内レンズが埋め込んである袋が時間が経ってくるとこのように濁ってきてしまうことをいいます。おこってくる時期はひとりひとりまちまちです。早い人は半年くらい、遅い人は五年くらいたっても起こらない人もいます。 ![]() それじゃもう一度手術をしなくてはならないかというとそういうわけではありません。外来でレーザーの治療を受けて飛ばしてしまうことができますので、もう一度手術という心配はありません。 以上、当院で行っている術前説明会の内容を中心に説明しました。詳しいことは医師と直接お話しして説明を受けて下さい。 |
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